今週の焦点の一つは、日銀が21日に利上げするかである。これについて、安倍政権の経済ブレーン、とくにこの間「アンチ日銀」の代表格のようになっていた中川自民党幹事長の「知恵袋」と見られる人物は、まだ利上げに納得していない様子だ。21日利上げをめぐる議論における現在のキーワードは、どうやら「需給ギャップ」のようだ。たとえば、2月18日付けの日経新聞では、「需給ギャップならば(利上げに)前向き」として、以下のような考え方を示している。
「日銀は物価の先行きを占う上で、日本経済の需要と供給の差を示す需給ギャップを重視している。日銀の推計方法によると、すでに1%程度の需要超過で、物価が緩やかに上がっていく環境にあるとみている」(同記事)。
ところが、この需給ギャップに、「中川幹事長の知恵袋・黒衣」と見られる人物が噛み付いている。この「黒衣」は、ある経済専門紙の連載にペンネームで寄稿を続けていると見られているが、その最新版、2月19日付けの文章の中では以下のような議論が展開されていた。
FX取引、FX初心者、くりっく365、FX口座開設、FX資料請求「(需給)ギャップの水準について、政府は、4−6月期は0%、7−9月期にはマイナス0.1%であるとしている。(中略)実質成長率が2%くらいであるのに、政府と日銀のギャップが1.5%も違っていて、常識的に認識の差がないとはいえないだろう。(中略)日銀のギャップに対する見解を訂正しない以上、利上げ騒動が繰り返される可能性はある」。
「利上げ騒動が繰り返される可能性」とは、最後の最後で利上げ見送りになるということだが、さて今回はどうか。ところで、このような利上げの有無とは別に、為替への影響を考えれば、必ずしも決定的なものではないというのが、私の基本的な考え方だ。
日銀がかりに利上げしても、日米の政策金利差はドル優位が5%から4.75%に縮小するだけであり、圧倒的なドル優位の構図には大きな変化がない。これでは、金利差を大背景とした円キャリー取引の有効性に変化が生じることはないだろう。FX
かつて、日米金利差が縮小する中で、投機筋が円売りから円買いに転換したケースを調べてみると、一つの目安は金利差4%程度といえそうだ。日米政策金利差がさすがに4%以下に縮小してくると円キャリー取引の有効性もぐらつきだすものの、逆にいえばそれまでは円キャリー取引は機能しうそうだ。
ただし、そうはいっても最近の円売りはさすがに行き過ぎ観がある。その意味では、日銀利上げ有無にかかわらず、円一段安には限界があるだろう。そして、それにとどまらず円買い戻し急拡大となるなら、それは日銀利上げによる金利差縮小によるものというより、単に円売られ過ぎの修正ということだと思う。2月9−10日にドイツで開かれたG7(7カ国財務相会議)では、事前に一部で注目された共同声明で円安を懸念するようなことはなかった。しかし、まったく何もなかったということでもなさそうだ。じつは欧州は、中国人民元安懸念で、新たな共同声明言及には成功したようだ。中国人民元についての共同声明における言及は、昨年9月シンガポールG7の、「中国の為替レートの一層の柔軟性が望ましい」といった表現から、「中国の実効為替レートが、変動することが望ましい」といった表現に変更された。
具体的な変更点は、「実効レート」とした部分だ。この背景として、欧州の不満が浮かび上がってくる。
人民元は、最近は対米ドルではじり高傾向が続いていた。しかし、約1年前に、米ドルとの連動性から複数の通貨と連動する通貨バスケット制度に移行したものの、実質的には米ドルとの連動が続いていた。この結果、昨年暮れにかけてのドル安・ユーロ高局面では、人民元安・ユーロ高となり、むしろユーロに対しては下落していたのである。
このように見ると、昨年9月の共同声明における「中国の為替レート」といった表現から、今回「中国の実効為替レート」といった具合に、通貨の総合力を示す「実効レート」に表現を修正したのは、人民元安・ユーロ高の動きに不満を抱いていた欧州の可能性が高いだろう。FX
今回、欧州は事前に円安不満を相次ぎ表明、共同声明に円安懸念を盛り込むかが一部で注目されていた。結果的に円安懸念は盛り込まれなかったものの、「実効レート」といった表現で、人民元安・ユーロ高懸念の盛り込みには成功したということかもしれない。 一方の円安については、とくに共同声明で懸念を特定されなかったことから、一時この間の円最安値122.20円に迫る場面もあったものの、今のところその更新までには至っていない。
そもそも、G7が「容認」したからといって、逆に「懸念」表明したからといって円安がさらに進む、反発に転じるということでもないだろう。円の価値は市場によって決められているということだ。
そして、G7が懸念しなかったからといって、円がかなり下落しているということもまた間違いない。じつは、日本政府が円安阻止介入したのは、確認できる91年以降で3局面しかない。91、92年と97−98年だ。このうち、実効相場で見ると、97−98年の円安阻止介入水準にかなり近いところまで円はすでに下落している。
G7が一致して懸念を表明しなくても、総合力で見るとかなり懸念を抱く人が多いところまで円安が進んでいるということもまた間違いないだろう。G7が終わったが、為替市場はまだ方向感をつかめていないようだ。経験則からすると、方向感が出やすいのは、G7よりも、14−15日に予定されているFRB議長の議会証言だろう。この議会証言は、年2回予定されているFRB議長にとっての重要証言だ。さすがに「ドルの番人」の重要証言だけに、この後から少なくとも米金利は一定の方向に動き出すことがこれまでは多かった。
たとえば、バーナンキ議長は、昨年2月15日と7月19日にこの議会証言をおこなっていたが、この証言からだいたい1ヶ月程度で、米長期金利(10年債利回り)は0.2%以上の上昇ないし低下となっていた。それを今回に当てはめると、米長期金利は3月にかけて5%に乗せるか、それとも4.5%へ近づくかが決まることとなるだろう。
この数ヶ月のドルは、米長期金利との連動が続いている。ということは、バーナンキ証言を受けた米金利の行方は、そのままドルの行方も決める可能性があるわけだ。 ところで、一般的には、今回のG7で円安懸念が出るかが注目されていた。そして結果的に、そういった動きにならなかったことで、G7直後はいったん円安トライの展開となったが、これまでのところはそれも跳ね返されている。
私は上記のように、バーナンキ証言を受けて米長期金利が5%を目指すような動きになるようなら、ドル高の結果として円安が進む可能性もあるとは思う。しかしそうでない限りは、基本的に円安には限界があると思う。
そう思う理由の一つは、季節性だ。例年1−3月期は、日本企業の3月末決算を控えて、外貨運用は出渋る。実際、1月は4ヶ月ぶりに対外債券投資が売り越し(資本流入超過)になったようだ。つまりこの時期は、基本的には円安になりにくいのである。
1月に外債投資が売り越しだったにもかかわらず円一段安となったのは、投機円売りが史上最大規模に拡大したためだ。しかし別な言い方をすると、この投機円売りは実需の円売りフォローのない可能性が強い。そうだとすれば、現在の円売りはいったん買い戻しを余儀なくされるだろう。
そもそも、2月は「逆張り」傾向が強い。ドルが高く始まれば安く終わり、安く始まれば上がりやすいということだが、その鍵を握る一つが15日の米国債大量償還にありそうだ。償還された米国債および利払い資金を決算前に国内に引き揚げるかは、ドルの水準が一つの目安になる。そのドルの水準、今年はかなり対円で高いといえるだろう。 G7(7カ国財務相会議)で円安が問題になるかが取り沙汰されている。ところで、これまでのG7の歴史からすると、円安の許容限度として125円という水準が一つの重要な目安になってきたといえそうだ。ケースバイケースで、円安を放置することはあるが、ひとたび行き過ぎた円安是正に動くと、125円が結果として誘導目標となってきた。 1985年のプラザ合意後、最初にドル高・円安が問題になったのは1992年4月G7だった。このG7では、「前回の会合以来の円の下落は調整プロセスに貢献していないことに留意した」といった表現で円安を牽制、そして結果的にも円安は134円程度でピークアウトした。
ところで注目されたのは、このG7前後の日本政府の為替介入。為替介入はG7終了後に円高・ドル安が130円を割り込んでも継続され、結果的に8月まで125−126円程度まで続けられた。つまり、ドル円を125円以下に押し下げる意図のものだったのである。FX
次に、円安・ドル高が問題になったのは97年2月G7。これは、95年の80円から反転した円安・ドル高に対するものだったが、まさに125円手前で、「反転終了宣言」となったのである。
「超円高」反転の主導役の一人が、当時の米ルービン財務長官だったが、そんなルービン氏の決り文句が「強いドルは米国の国益」。ところが、ルービン長官は、この97年2月ベルリンG7前に、「強いドルは国益だが、ただもうかなり長い間続いてきた」と微妙に発言を軌道修正、ドル高・円安容認の軌道修正を示唆したが、この時のドル円水準はまさに125円前後だった。FX
ただ、それでも勢いづいた相場は止まらなくなる。円安・ドル高は、「反転終了宣言」も無視した形で、さらに翌98年にかけてついに130円を超えて進むところとなった。これに、98年4月からの金融ビックバン、外為法改正に伴う日本からの資本流出拡大思惑も重なると、いよいよ円安・ドル高は急加速となった。
これに対して、98年4月10日、日本政府がおこなった円安阻止のための円買い・ドル売り介入は何と2兆6千億円にも上り、一日の介入額としては今に至る史上最大規模のものだった。
それから5日後の98年4月15日におこなわれたG7が発表した共同声明には、そんな日本政府の円安阻止行動を支持するといった間接的な表現ながら、史上2度目の「円安懸念」が言及された形となった。
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